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郵便局関係者が切手を換金し着服(2)~廃棄に関する内部統制

公認会計士・税理士 森 智幸

1.切手処分までの業務プロセス

 郵便局の幹部職員が切手を換金し着服した事件の続きです。

 

 前回までの流れでは、別納料金が切手で支払われた場合、社内規定では、「窓口の郵便部で「使用済み」を示す消印を押したうえで、総務部で細断処分することになっていた」といたもののシート状になった切手が持ち込まれた場合、郵便部の担当者が「どうせ細断されるから」と考え、消印を押す手間を省いて総務部に回すことがあった。」ということです。

 

 さらに、朝日新聞の記事によると、

 

「芝郵便局(東京都港区)で総務部課長だった40代男性は、こうした消印のない切手を不正に持ち出して換金。(中略)当時は出納責任者で、切手の細断処分を実行する立場にあった。立会人も置いていなかったため、持ち出しが可能な状態にあったという。」

 

 ということです。

 

 ここで、記事に基づいて、処分までの業務プロセスをまとめると以下のようになります。

 

 ①窓口の郵便部で、持ち込まれた切手に「使用済み」の消印を押印する。 

 ②郵便部から押印済みの切手を総務部に回す。

 ③総務部で切手の細断処分を行う

2.廃棄にかかる内部統制

 記事では、③のプロセスで立会人を置いていなかったということですが、一般的には廃棄にかかる内部統制として、廃棄は複数人で行うようにします。

 その理由は、横流しによる転売を防止するためです。

 

  廃棄にかかる業務プロセスと内部統制は概ね以下のとおりです。

  

  【廃棄に係る業務プロセスと内部統制】

(イ)廃棄にかかる稟議書を作成し、決裁を得る。

(ロ)廃棄業者に対象資産を引き渡す。このとき、廃棄担当者ともう一名が立ち会い、確実に廃棄業者に渡したことを確かめる。

(ハ)廃棄業者から廃棄証明書を発行してもらう。

 

 廃棄に係る内部統制については、通常、有形固定資産や一部の少額減価償却資産が対象となりますが、今回の郵便局のように、切手の細断処分を行うプロセスを設けているのであれば、これに準じた内部統制を設けるべきであったと思われます。

 

 記事によると、立会人がいなかったということですが、たまたまいなかったのか、そもそも立会人を置く規定となっていなかったのか、どちらなのかは不明です。

 しかし、推測ですが、長期間に渡って横流しが行われていたことから、立会人を置く規定となっていなかった可能性が高いと思います。

 そうなると、このプロセスについては内部統制のデザインの不備の可能性が高そうです。

 

 なお、使用済みの消印があったら横流しはできないのではないか、立会人まで置く必要はないのではないかと思われる方もいらっしゃると思いますが、使用済みの消印がある切手シートでも、買いたいと思うマニアはいると思います。

 特に、現在はネットオークションで、日本中をマーケットにして売りに出すことができますから、使えない切手シートでも買いたいと思う人はいるはずです。従って、買い手は十分つきます。

 従って、横流しを防止するためにも、今回の郵便局の切手細断においても立会人を置く必要はあります。

3.まとめ

 余談ですが、私は監査法人に所属していたとき品質管理も担当しており、そのとき監査調書の廃棄に関する規定も、自分で加筆して品質管理規程に盛り込みました。

 このときも、監査調書を廃棄業者に渡すときは、担当者ともう一名が立ち会うとしました。趣旨は同様に、確実に廃棄業者に渡したことを確かめるためです。

 

 今回の郵便局の件を見てみると、基本的な内部統制が設けられていない印象がします。

 郵便局は国民の生活にとって重要な存在ですから、健全な運営を期待したいところです。