公認会計士・税理士 森 智幸
1.新型コロナウイルス対応緊急融資制度の創設
新型コロナウイルスの感染拡大が止まりません。
そのため、各地域で中小企業向けに新型コロナウイルス対応緊急融資制度が創設されています。
大阪府は新型コロナウィルスの拡大により、経営に影響が出ている中小企業向けの緊急融資の取扱金融機関を発表しました(「新型コロナウイルス感染症対応緊急資金」創設について)。また、京都府・京都市も「新型コロナウィルス対応緊急資金」制度を令和2年2月6日付で発表しています。(「新型コロナウィルス対応緊急資金」)
目的は、新型コロナウイルスの感染拡大により経営に影響が出た企業に対する資金繰りの援助です。
2.売るモノが手元になくなる恐れ~資金繰り悪化のリスク
今回の新型コロナウィルスは中国の武漢を発生源として、中国全土に広まっています。
私が懸念しているのは、中国とのサプライチェーンの断絶です。
現在、中国から商品、部品、原材料を輸入している企業は非常に多くなっています。しかし、今回の影響で、このような物資の輸入が滞る恐れが出てきています。
そうなると、国内に需要はあるのにも関わらず、売りたいのに手元に売るモノがないという状況が発生する恐れがあります。
売るモノがないと、当然のことながらモノを売ることができないので、売上は上がりません。その結果、経営には何の問題もないのに、売上が減少し、ひいては資金繰りに悪影響が出てくる恐れがあります。
従って、中国依存度が高い企業は、今後の商品等の確保と資金繰りに注意する必要があります。
ちなみに、この売りたいのに売るものが手元にないというのは、業績悪化により信用が低下した企業によく見られる現象です。
信用が低下した企業は、掛で商品を仕入れることが難しくなってきます。売り側としては、期日までにちゃんと支払ってくれるかどうかわからない企業に商品を売りたくないからです。そのため、現金即時払いなら売ってくれる可能性はありますが、業績悪化企業にそこまでの資金はありません。
そのため、需要はあるのにも関わらず、手元に商品がないという状況が発生してしまいます。その結果、売上があがらず、ますます資金繰りが悪化するという悪循環に陥るわけです。
今回は、この新型コロナウイルスの影響で、これに似た現象が起こる恐れがあります。私は、それが非常に怖いことだと思っています。
3.観光業への影響
また、影響が考えられるのが観光です。すでに、中国を始め外国人観光客は激減しています。
私は現在京都に住んでいますが、私が見ても外国人観光客は大幅に減少しています。市内のあるとんこつラーメン店はガイドブックで紹介されたため、毎日夜まで外国人の行列ができていたのですが、現在は店の外に行列はできていません。
ホテルも電気がついている部屋の数が少なくなっています。
そのため、まず新型コロナウイルスの影響は、観光に関係する産業、すなわち、飲食店、ホテル、土産物店、百貨店などに影響が出てきます。
4.最後に
正直申し上げて、日本政府の対応はあまりにも甘すぎたと思います。すでに、感染経路不明の発症者が続出しています。
企業活動への影響は必至です。そのため、考えたくはないですが、経済環境は悪化することを前提として企業活動を進めるほうがよいと思います。
特に資金繰りには注意する必要がありますので、余裕があるうちに資金のプールに努められるのがよいかと思います。