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公益法人も「稼ぐ」必要がある理由

公認会計士・税理士 森 智幸

1.はじめに

 今回は、公益法人も収益力をアップして、積極的に稼ぐ必要があるという点について説明したいと思います。

 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

2.公益法人を取り巻く今後の環境

 公益認定を受けた公益法人は収支相償を満たす必要があるので、公益目的事業の経常収益を増大させてはいけないというイメージがあります。

 

 収支相償とは、簡単にいうと、公益法人は公益目的事業で剰余金を発生させてはならない、すなわち赤字にせよ、というものであり、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(以下「認定法」)の第14条に定める「その公益目的事業を行うに当たり、当該公益目的事業の実施に要する適正な費用を償う額を超える収入を得てはならない。」を根拠としています。

 

 しかしながら、公益法人も安定的な運営を行うためには自主財源を確保する必要があります。従って、公益法人も収益力をあげる必要があります。

 以下、公益法人を取り巻く今後の環境を予測してみたいと思います。

(1)補助金の減額の可能性

 多くの地方公共団体は、もともと財政状態が芳しくありませんでしたが、今回の新型コロナウイルス感染症の対策のため、補助金等の対策費用が増加したところが多いと思います。そのため、多くの地方公共団体において、財政が悪化している可能性があります。

 従って、補助金を受けている公益法人においては、受取補助金が減額される可能性はあると思います。

(2)国債等の利率低下

 これは、予測ではなく、現時点ですでに発生しているものですが、マイナス金利政策の影響により国債や地方債などの債権の利率が大きく低下しています。

 公益法人は、安全資産として国債や地方債に係る受取利息を運用益として運用しているところが多く見られます。しかし、国債等の償還に伴い、買換により同じ金融資産で運用しようとしても、利率がこれまでよりも大きく低下しているため、これまでと同じ水準の運用益を得られないというケースがよく見られます。

(3)コロナ禍による景気の低迷~会員数の減少

 新型コロナウイルス感染症の拡大により、経済は大きな影響を受けています。この影響に係る景気の低迷がどこまで続くかは不明ですが、この景気の低迷により、例えば、会員を社員としている同業者団体や観光協会といった社団法人は、会費負担の回避や会員の廃業などにより会員が脱退して会員数が減少する可能性があります。

 その結果、会費収入が減少する可能性もあると思います。

3.公益法人は稼いではいけないのか?

 このように、今後、公益法人を取り巻く環境は大きく変わっていく可能性が高いと思います。特に新型コロナウイルス感染症の拡大の影響は、徐々に公益法人にも出てくると思います。

 そこで、今後は受取補助金、国債等の受取利息、会費収入などへの依存度は減らして、自主財源の確保に努めることが急務といえます。

 

 そのためには、公益法人も収益力をアップし、経常収益あるいは指定正味財産の増加に努める必要があります。

 ここで、ネックになるのが冒頭に述べた収支相償ですが、これは公益法人が稼いではいけないということではなく、稼いでも最終的に別紙A(1)または(2)で計算された剰余金がマイナスであれば問題はありません。

 

 むしろ、公益目的事業において経常収益を稼いで、その分、公益目的事業に投資すれば、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するという公益法人制度の目的を達成するといえます。

 

 従って、公益法人も積極的に稼いでよいというのが結論です。

4.どうやって「稼ぐ」のか

 とはいえ、言うは易く行うは難しのことわざ通り、収益力をアップして稼ぐことに努めるといってもそう簡単にはいきませんし、どのようにすればよいのかという点についても確実な方法があるわけでありません。

 しかしながら、あくまで私見ですが、公益法人においても収益力アップのための有効な方法があります。それはガバナンスの強化です。

 この点については、次回以降にご説明したいと思います。