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冷凍餃子の無人販売ビジネス

公認会計士・税理士 森 智幸

1.五条通沿いに「無人販売所」がオープン

 先日、事務所に行ったら、近くの五条通沿いに「祇園餃子」という冷凍生餃子の無人販売所がオープンしていました。

 

 場所は、京都リサーチパークがある五条七本松の交差点から少し東に歩いたところです。JR丹波口駅からは西に歩いて5分ぐらいでしょうか。

 

 最初は、中華料理店がオープンしたのかと思いましたが、よく見ると「無人販売所」と書いてあり驚きました。

 

 私は「餃子の無人販売所」は初めて見たのですが、調べると、冷凍餃子の「無人販売所」は全国各地で多数の店がオープンしているようです。

2.購入の方法

 この冷凍餃子の無人販売というビジネスは「餃子の雪松」が有名だそうです。

 無人販売所というものは初めて知りましたので、どのように購入すればよいのか全く想像がつきませんでしたが、餃子の雪松のページを見ていたらYou Tubeで購入方法を説明している動画がありました。

 こちらを見ますと、購入方法は実に簡単で、冷凍庫から冷凍生餃子を取り出し、賽銭箱のような箱にお金を入れるだけということです。

 防犯カメラは設置されているということですが、来店者の善意を前提にしているといえます。

3.どの店も同じ方式?

 さらに、You TubeやWebで色々と見ていて驚いたのですが、各地で営業している冷凍餃子の無人販売所は、どこも「36個で1,000円(税込)」と値段が同じです。私が見た中では「神戸餃子楼」という無人販売所は「40個で1,000円(税込)」でしたが、ほぼ同じです。

 また、料金を入れる箱も、どの店も賽銭箱の形をしています。

 

 こちらはABC(朝日放送)による「ふくちぁん餃子」を紹介した動画ですが、値段はやはり「36個で1,000円(税込)」です。賽銭箱の形をした箱に料金を入れるという点も同じです。

4.差別化は「味」のみ?

 どの店も購入方法も同じ、料金も同じということであれば、このビジネスの差別化は「味」と「立地」ということになりそうです。

 とりわけ「味」が重要になってくるのではないでしょうか。

 

 通常の飲食店であれば、味がメインにはなるものの、接客、店員、待ち時間、立地、衛生管理、店の雰囲気などいろいろな要素がその店の評価に繋がりますが、無人販売所では味と立地を除いて、全くそのようなものがありません。

 

 立地については、商店街の中にあればベストですが、多少郊外でも、長期保存できる冷凍餃子なので、車でやってきてまとめ買いする人も多いと思います。それを考えると、立地も大きく影響はしないかもしれません。

 

 このように考えると、冷凍餃子は、ほぼ味で決まるのではないかと思います。 

5.無人販売所の内部統制

 最後に、無人販売所の会計や内部統制について考えてみました。

 無人販売所は完全に現金取引なので、取引の証跡が全く残りません。このあたりは税務で論点になる可能性があります。

 

 想定されるリスクとしては、販売記録が残らないので売上が網羅的に計上されないリスクが考えられます。

 無人販売所では、料金箱に入っている現金総額が売上高となります。しかし、何月何日の何時に何個販売したのかといった個別の販売記録がないので、例えば売上金の一部を抜いても発覚しにくい可能性があります。

 

 そこで、ここでは在庫の棚卸がポイントになってくると思います。

 ただし、棚卸資産の把握方法には継続記録法と棚卸計算法がありますが、無人販売所の場合は、棚卸計算法のみとなります。なぜかというと、無人販売所では客が冷凍庫から冷凍餃子を取り出すだけなので、冷凍庫から出庫した記録が全くないからです。

 

 そのため、実地棚卸を行った結果、入庫数と実地棚卸数との差額が販売数となるはずですが、実際に料金箱に入ったお金から換算した数との比較を行って差額があれば、その分は盗難による棚卸減耗損とするのが妥当ではないかと思います。

 従って、この棚卸を適切に行わないと、売上が漏れなく計上されたかどうかの立証が難しくなります。

 

 従って、まず、工場から無人販売所に出荷する際には、入出庫システムで、どの店舗に何個出庫したのかを確実に記録しておくことが必要です。また、実地棚卸においては、二人一組で行い、ダブルカウントすることです。さらに、棚卸は毎月行うことが望まれます。 

6.最後に

 ブログを書いていたら、オフィスグリコを思い出しました。オフィスグリコも無人販売のひとつです。

 オフィスグリコは前職の事務所にもありました。毎月、担当の人が事務所にやって来て、お金の集金とお菓子の補充を行っていました。確か、端末を使って在庫チェックを行っていたと記憶しています。

 このような無人販売は、現金取引で、しかも販売記録が残らないため、売上を適切に計上しているかどうかの立証が難しくなります。従って、無人販売を行う場合は、在庫の内部統制を確立させておくことが必要ではないかと考えられます。