公認会計士・税理士 森 智幸
KEY POINTS
- LEDランプへの取替費用は修繕費として処理する。
- 公益法人会計では、配賦割合に基づいて各事業の修繕費として計上する。
- 修繕費は経常費用として計上されるので、収支相償の計算の要素となる。
1.はじめに
LEDランプは電力消費量が少なく、消費寿命も長いため、オフィスの天井の照明を蛍光灯からLEDランプに取り替えるという公益法人も増えてきています。
特に、近年は電気料金の高騰が続いているため、将来の電気料金節減のためLEDランプへの需要も高まってきているようです。
そこで、今回は、公益法人(本稿では公益社団法人・公益財団法人を指します)がオフィスの照明をLEDランプに取替えた場合の会計処理と収支相償への影響について記載します。
なお、本稿は私見であることにご留意ください。
2.国税庁の見解
このLEDランプへの取替費用については、まず税務上の取扱いについて、国税庁が質疑応答事例の「自社の事務室の蛍光灯を蛍光灯型LEDランプに取り替えた場合の取替費用の取扱いについて」において回答を示しています。
この質疑応答事例の国税庁の回答によると、LEDランプへの取替費用は「修繕費として処理することが相当」ということです。
理由は、「蛍光灯(又は蛍光灯型LEDランプ)は、照明設備(建物附属設備)がその効用を発揮するための一つの部品であり、かつ、その部品の性能が高まったことをもって、建物附属設備として価値等が高まったとまではいえない」と考えられるためです。
3.会計処理
以上は、法人税上の見解ですが、会計上についても検討する必要があります。
この点については、会計上も同様に、LEDランプへの取替費用は修繕費として処理して問題はないと考えます。
理由は、上記2と同様であり、また、法人税法上、損金算入するためには会計上、費用として処理し損金経理をしておく必要があるためです。
会計処理は税務に引っ張られるわけではありませんが、LEDランプへの取替費用は会計上も収益的支出として修繕費と処理しても問題はないと考えられます。
したがって、例えば、公益法人が使用している建物の照明をLEDランプに取替えた場合、公益目的事業会計、収益事業等会計、法人会計の区分に応じて修繕費を計上します。
【設例】
- 公益社団法人A協会は、✕年2月に、現在使用している建物の蛍光灯をLEDランプに取替えた。
- LEDランプの購入費用は、総額1,100,000円(税込)であった。
- 配賦割合は、公益目的事業会計80%、収益事業等会計10%、法人会計10%である。
- 税込処理を適用している。
【仕訳】(単位:円)
(借方)修繕費(公) 880,000 (貸方)未払金 1,100,000
修繕費(収) 110,000
修繕費(法) 110,000
4.収支相償への影響
(1)経常費用として計上
公益法人においては収支相償への影響が問題となりますが、上記3のように、公益目的事業会計において修繕費で処理すれば、公益目的事業に係る経常費用となりますので、別表A(1)の経常費用欄(3欄、7欄)の計上対象となり、剰余金のマイナス計算に貢献することになります。(収益事業等の利益額の50%を繰り入れる場合)
(2)有形固定資産として計上した場合
なお、もし資本的支出として有形固定資産で処理した場合で、剰余金がプラスとなった場合は以下の通りになると考えられます。(別表A(1)を使用する場合)
①公益目的事業が1つの場合
有形固定資産とした金額のうち、公益目的保有財産に係る金額相当分は、A(1)の第二段階における剰余金から控除することが可能です。
13欄でプラスの金額となった場合でも、その下の」第二段階における剰余金の扱い」欄で、13欄の金額から公益目的保有財産相当額を控除した金額を収支相償の額として記載します。
②公益目的事業が複数の場合
この場合は、減価償却費として第一段階の経常費用に反映されるのみとなります。
したがって、毎事業年度の減価償却費として、将来にわたって経常費用が計上されることになります。
なお、「第二段階における剰余金の取扱い」での「公益目的保有財産に係る資産取得」による減少は、第二段階で発生した剰余金が対象となります。
そのため、第一段階で発生した剰余金については「公益目的保有財産に係る資産取得」によって減少させることはできません。
第一段階で発生した剰余金を解消するには、(イ)経常費用の計上、(ロ)特定費用費用準備資金の計上となります。(注)
(注:この点は、昔、資産取得資金の取扱いについて、内閣府と確認したところ、第一段階で発生した剰余金については、資産取得資金は使用できないということでした。したがって、「公益目的保有財産に係る資産取得」による剰余金解消もできないと解されます。)
5.おわりに
今回はLEDランプの取替費用にかかる会計及び税務上の取扱いについて見てみました。
税務上、どれがどこまで損金として認められるかについては、国税庁の質疑応答事例や文書回答事例にも説明があるので、自分の理論で決めてしまわないようにすることが重要です。
今回のブログが実務の参考になりましたら幸いです。
執筆者:公認会計士・税理士 森 智幸
令和元年に独立開業。株式会社等のガバナンス強化支援、公益法人コンサルティングなどを行う。
PwCあらた有限責任監査法人ガバナンス・リスク・コンプライアンス・アドバイザリー部では、内部統制や内部監査に関するアドバイザリーや財務諸表監査を行う。
これまで、上場会社の財務諸表監査・内部統制監査、アメリカ合衆国への往査、海外子会社のJ-SOX支援、内部監査のコソーシング、内部統制構築支援、公益法人コンサルティングなどに携わる。執筆及びセミナーも多数。
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