· 

【今さら聞けない】公益法人の監事の社員総会・評議員会への出席の要否について

KEY POINTS

  • 法令上、監事は社員総会または評議員会への出席義務はない。
  • しかし、監事は社員総会または評議員会において、特定の事項について説明を求められた場合には、当該事項について必要な説明をしなければならないという法令上の義務がある。
  • 説明義務があることを鑑みると、実質的には、監事は社員総会または評議員会への出席が必要であるといえる。

【目次】

1.はじめに

 公益社団法人・公益財団法人(以下「公益法人」といいます)、一般社団法人・一般財団法人(以下「一般法人」といいます)は、期末日後は決算を行い、理事会で計算書類等の承認を受けた後、定時社員総会または定時評議員会で計算書類等の承認を受けることになります。

 今回は、公益法人・一般法人の監事が、社員総会または評議員会に出席する必要があるかどうかという点について説明します。

 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

 

2.理事会の場合

 監事は、理事会に出席する義務があることは、ほぼ知られていると思います(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「一般法」といいます)101条1項、197条)。

 これは、監事は理事の職務の執行を監査する立場にあることから、理事会において法令または定款違反、著しく不当な決議がなされるのを防止するためです(参考:弥永真生『リーガルマインド会社法第15版』(有斐閣)))

 

3.社員総会または評議員会の場合

 では、監事は社員総会または評議員会への出席義務があるのでしょうか?

 実は、法令上は、監事は社員総会または評議員会への出席義務はありません。

 

 これは、監事はあくまで理事の職務の執行を監査する立場にあり、そもそも社員や評議員を監査することを目的としていないことから、社員総会または評議員会への出席義務は求められていないためと考えられます(私見です)。

 

 一方で、監事を設置している公益社団法人・一般社団法人、公益財団法人・一般財団法人においては、理事及び監事は、社員総会または評議員会において、社員または評議員から特定の事項について説明を求められた場合には、当該事項について必要な説明をしなければならないとされています(一般法53条、190条)。

 

 社員または評議員は、法人の業務執行に携わる立場にありませんから、合理的な判断に基づいて決議を行うにあたっては、法人の情報を知る必要があります。そのため、業務執行を行う立場にある理事や理事の職務の執行を監査する立場にある監事は、法人の情報を知りたい社員または評議員に対して、説明をする必要があるためと考えられます。

 なお、弥永真生『リーガルマインド会社法第15版』(有斐閣))では「会議の一般原則上、当然のことであるが、確認的に置かれた規定である。」とされています。

 

4.法令上、出席義務はないものの・・・

 これを踏まえると、確かに監事は法令上、社員総会または評議員会への出席義務はないものの、社員または評議員が決議を行うにあたり合理的な判断を行うために、特定の事項について説明を求められた場合、必要な説明を行わなければならないことから、実質的に出席する必要があると考えられます。

 

 例えば、計算書類の特定の事項について、監事が会計監査において適正と判断した理由などを聞かれた場合、回答できるのは監事しかいません。そのため、監事も社員または評議員から説明を求められたときに備えて、社員総会または評議員会に出席する必要があると考えられます。

 

5.おわりに

 私の経験上、社員総会では、監事は必ず出席していましたが、評議員会になると監事が出席していないという法人がときどきありました。もちろん、これまで説明したように、これは法令違反ではありません。

 しかし、説明を求められたときは説明義務がありますので、もし、社員または評議員の質問に回答しないとなると、法令に抵触することになります。

 したがって、監事は、社員総会または評議員会にも出席することが求められるといえます。

 これを踏まえると、社員総会または評議員会のスケジュールを組むときに、監事にもスケジュール調整をしてもらうことになります。

 今回の説明が、公益法人または一般法人の機関運営の参考になりましたら幸いです。 

 

追加情報

大阪府による公益法人の立入検査の主な指摘事項の一部

 大阪府では「立入検査における主な指摘事項」として、「監事が社員総会・評議員会に出席していない」という指摘事項を挙げています(上図参照)。

 監事が、正当な理由なく、絶命義務を果たすことができなかったと認められる場合には、善管注意義務違反を問われる可能性があるとされています。

 

執筆者:公認会計士・税理士 森 智幸

令和元年に独立開業。株式会社等のガバナンス強化支援、公益法人コンサルティングなどを行う。

PwC Japan有限責任監査法人ガバナンス・リスク・コンプライアンス・アドバイザリー部では、内部統制や内部監査に関するアドバイザリーや財務諸表監査を行う。

これまで、上場会社の財務諸表監査・内部統制監査、アメリカ合衆国への往査、海外子会社のJ-SOX支援、内部監査のコソーシング、内部統制構築支援、公益法人コンサルティングなどに携わる。執筆及びセミナーも多数。


公益法人の機関運営に関する無料相談実施中!