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【知らないとマズい】事業報告の附属明細書の作成義務~公益法人・一般法人

KEY POINTS

  • 公益法人・一般法人は、事業報告の附属明細書についても作成義務がある。
  • しかし、記載内容がない場合は作成を省略することになる。
  • 事業報告の附属明細書の作成を省略する場合、その旨を記載した書面を作成して、作成を省略したことを明示する必要がある。

【目次】

【法令等の略称】

  • 公益社団法人、公益財団法人・・・公益法人
  • 一般社団法人、一般財団法人・・・一般法人
  • 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律・・・一般法
  • 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律施行規則・・・施行規則
  • 公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律・・・認定法
  • 公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律施行規則・・・認定法施行規則

1.はじめに

 公益法人や一般法人は、期末日後は計算書類等を作成しなければなりません。

 その後、監事の監査、理事会の承認、備置き、社員総会または評議員会での承認という流れになります。この作成しなければならない計算書類等の中には「事業報告の附属明細書」があります。

 今回は、この事業報告の附属明細書の実務について説明します。

 なお、本稿は私見であることにご留意ください。

 

2.作成しなければならない計算書類等

 公益法人・一般法人は、各事業年度にかかる計算書類(貸借対照表及び損益計算書)及び事業報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければなりません(一般法123条2項)。

 なお、損益計算書は、公益法人・一般法人では「正味財産増減計算書」に該当します。

 これに基づくと、最低限、作成しなければならない書類は以下の通りとなります。

  • 貸借対照表
  • 正味財産増減計算書
  • 計算書類の附属明細書
  • 事業報告
  • 事業報告の附属明細書

 これに加えて、正味財産増減計算書内訳表、財務諸表に対する注記も作成することになります。

 公益法人の場合は、財産目録の作成も必要となります(認定法21条2項、22条1項)。

 また、会計監査人の設置が義務付けられている公益法人はキャッシュ・フロー計算書の作成も必要となります(認定法施行規則28条1項1号)。 

 「事業報告の附属明細書」の作成義務については、「知らなかった」という公益法人・一般法人が多く見られますが、法令上は作成義務が定められていますので注意しましょう。

 

3.事業報告の附属明細書とは?

 では、事業報告の附属明細書とは何を記載しなければならないのか?という点ですが、一般法施行規則34条3項では以下の定めが設けられています。

 

「事業報告の附属明細書は、事業報告の内容を補足する重要な事項をその内容としなければならない。」

 

 これによると「事業報告の内容を補足する重要な事項」が記載対象となっています。

 しかしながら、公益法人・一般法人の実務において、このような重要な事項があるケースは非常に少ないと思います。そのため、このような事項がない場合は、記載することがありませんので、事業報告の附属明細書の作成は省略することになります。

 

 ただし、あくまで公益法人・一般法人は、事業報告の附属明細書の作成義務があるので、作成を省略する場合は、その旨を明示する必要があります。

 次の4では、その方法を紹介します。

 

4.作成を省略する場合の実務

 実務において、事業報告の附属明細書の作成を省略するときは、「事業報告の附属明細書」というタイトルを付けたうえで、以下の記載を付した書面を作成することが多く見られます。(あくまで例となります)

 

【事業報告の附属明細書の作成を省略する場合の記載例】

 事業報告の附属明細書

 

 令和◯年事業年度においては、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律施行規則第34条第3項に規定する附属明細書に記載すべき「事業報告の内容を補足する重要な事項」が存在しないので作成しておりません。

 

 この書面を事業報告の最後に添付すれば、法令上は問題ありません。

 

 なお、公益法人の場合、事業報告の附属明細書の作成を省略するときは、このような書面を作成していないと、立入検査のときに指摘されることもあるので、注意しましょう。

 

5.おわりに

 今回は、事業報告の附属明細書の作成とその省略について見てきました。

 公益法人・一般法人では、事業報告の附属明細書を作成することはめったにないと思いますが、作成義務はあるので、省略するときはその旨を明示する必要があります。

 今回のブログが実務の参考になりましたら幸いです。

 

公認会計士・税理士 森 智幸

慶應義塾大学商学部卒。2019年に独立開業。企業の内部統制の強化、内部監査のコソーシングなどガバナンス強化を専門としている。また、公益法人会計は10年以上の実績があり、会計・税務に加えて、法制度にも詳しい。

PwC Japan有限責任監査法人では、国内・海外の企業のガバナンス強化支援などに携わる。

これまで、上場会社の財務諸表監査、アメリカ合衆国への往査、公益法人コンサルティング、法人税・消費税の税務などを行う。

主な著作は『独立する公認会計士のための税理士実務100の心得』(中央経済社)。『税務弘報』(中央経済社)、月刊『企業実務』(日本実業出版社)などの雑誌への寄稿も多数。


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