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監査報告書の日付表示~令和元年を迎えて

公認会計士・税理士 森 智幸

1.新しい監査報告書の様式

 平成30年7月に監査基準が改訂され、「監査上の主要な検討事項」を監査報告書に記載することになりました。適用時期については、令和3年3月決算に係る財務諸表の監査から適用することになりますが、早期適用も可能となっています。

 これに伴い、日本公認会計士協会も令和元年7月に「監査報告書に係るQ&A」を公表し、従来の監査報告書と新しい監査報告書の変更点及び共通点の解説などを行っています。

 新しい監査報告書では、監査上の主要な検討事項の記載のみならず、監査意見を監査報告書の冒頭に記載するなど多くの改訂が行われています。

2.監査報告書の日付~和暦か西暦か

令和元年

 本日は、日本公認会計士協会の監査事例研修会に行ってきました。新しい監査報告書の様式についての解説もありました。

 研修内容については記載することはできませんが、監査報告書に関して、監査報告書の日付の記載方法についての話がありましたので簡単に触れたいと思います。

 今年の5月から元号が平成から令和に変わりましたが、監査報告書の日付の記載方法についてどのように記載すればよいのか気になるところです。具体的には和暦で記載するのか、西暦で記載するのかという点です。

 以前、当ブログでも「財務諸表などの日付表示~令和元年を迎えて」で、有価証券報告書、公益法人、社会福祉法人の計算書類の日付の記載方法について記載しました。

 業務本部調査・相談グループにも日付の記載方法についての質問があったようです。

 

 結論を申し上げますと、監査報告書の日付は和暦と西暦のどちらでもよいということです。

 監査報告書のひな形で「✕年」と記載しているのは、和暦と西暦のいずれも選択可能であることを示しているということです。

3.財務諸表は?

 「財務諸表などの日付表示~令和元年を迎えて」で記載しましたが、内閣府が各都道府県知事及び各指定都市市長宛に、平成31年4月2日付で出した「元号を改める政令等について」では、以下の申し合わせ事項が示されています。

  • 改元日前までに作成した文書において、改元日以降、「平成」の表示が残っていても、有効であること
  • 改元日以降に作成する文書には、「令和」を用いること。やむを得ず「平成」の表示が残る場合でも有効であるが、混乱を避けるため、訂正等を行うこと
  • 元号を改める政令の公布日から施行日前までに作成し公にする文書には、「平成」を用いること
  • 法令については、「平成」を用いて改元日以降の年を表示していても、有効であり、原則、改元のみを理由とする改正は行わないこと
  • 国の予算における会計年度の名称については、原則、改元日以降は「令和元年度」とすること

 このように、行政に関する文書では「令和」を使用することが求められています。

 我が国は、元号を使用する国です。古代より、大化から始まり、建武、応仁、享保、慶應など、いろいろな元号が使用されてきました。そして、明治維新以後、明治、大正、昭和、平成と続き、現在の令和に至っています。

 従って、行政文書において元号を使用するのは当然と言えます。

 

 そのため、行政文書において元号の使用が求められていることから、株式会社、公益法人、社会福祉法人などの財務諸表について、どのように記載すればよいのかが気になるところですが、当時のブログの結論を簡単に記載しておきます。

有価証券報告書 和暦と西暦どちらでもよい
会社法における計算書類等 和暦と西暦どちらでもよい
公益法人の計算書類等 公益認定を受けた一般社団法人及び一般財団法人(公益法人)は元号で記載するほうがよい
社会福祉法人の計算関係書類 元号表示

4.公益法人、社会福祉法人では元号を使用する理由

 公益認定を受けた一般社団法人及び一般財団法人(公益法人)は、行政庁に定期提出書類を提出する必要があります。この定期提出書類は、エクセルのプルダウンにおいて、日付表示については元号のみが表示されています。

 そのため、定期提出書類が元号表示である以上、添付して提出する計算書類等についても元号で表示しておかないと、あわせてみたときにとても見にくくなってしまいます。それと、場合によっては記載誤りのリスクもあります。

 従って、定期提出書類の表記にあわせるために、計算書類等も元号表示が望ましいと考えられます。

 

 次に、社会福祉法人では、新制度になってすべての社会福祉法人がWAMネットから所轄庁に提出することになり、提出用の計算関係書類の様式も全法人共通のものに統一されました。

 この提出用の計算関係書類では元号が使用されていますので、日付表示は元号表示となります。

 ただし、各法人の評議員会で承認される計算関係書類の様式は自由なので、そこでは和暦と西暦のどちらでも使用できますが、公益法人と同じくWAMネットの提出用計算関係書類の作成を考えると、元号でそろえておくほうがよいと思います。こちらも同じく、記載誤りのリスクがありますので、元号でそろえておくほうがそのリスクを低減できます。

5.まとめ

 このように、和暦と西暦のどちらを使用するのかといった問題は意外に簡単にいかないものです。

 また、日付表示は、財務諸表の一つの構成要素なので、正確に記載する必要があります。監査報告書についても、日付は時間的な限定を示すなど(例えば、重要な後発事象など)、重要な意味を持ちます。

 従って、和暦と西暦のどちらを使用する場合でも、誤りがないように正確に記載する必要があります。